2016-08-19

Alex Moulton SST Air Force Blue「MokuTune Special Turning」 Ver.1 組み立て編。

Alex Moulton SST(Air Force Blue)
カスタマイズしながら組み立てていきます。

ロングリーチブレーキ仕様のSSTを、ショートリーチに変更するため、
新車時からリアフォークの塗装を剥がします。

ロウ付け箇所の塗装を剥がした状態。
アウターガイドを削り取り、ヤスリで整えます。

同じくブレーキを取り付けている台座も削り取ってヤスリで滑らかに仕上げます。

ブレーキ台座を削り取ると、リアフォークの寸法が変わる事があるので、
ロウ付けする前に点検しておきます。
ホイールがリアフォークの中心になるように修正します。
修正が出来たら、新たに取り付けるブレーキ台座を準備します。
ブレーキ台座をリアフォークの幅と合うように何度も確認しながら台座の幅を
削って調整し、パイプの丸みに合うように削ります。

台座と新しいアウターガイドをロウ付けしました。

ブレーキ台座がロウ付け出来たら、熱による歪みを点検します。
次はリアフォーク同様にフロントフォークの塗装も剥がし、
フォークエンドを取外します。
取り外したフォークエンドにはロウ付けによるロウが残っているので(画像左)、
削り取っていきます(画像右)。

フォーク足の長さ削って調整し、再度フォークエンドをロウ付けし直します。
ロウ付けが出来たら、錠盤で寸法やエンドの曲がりを点検します。

少し話が脱線しますが、フォークの角度や長さなどは、治具(固定する器具)が無いと、きちんとした寸法でロウ付けができないので、モールトン用にさまざまな治具を製作してきました。
最後にフロントブレーキとホイールを仮付けして、
ショートリーチブレーキの位置確認をします。
左)ロウ付けが終わった塗装前のリアフォークとフロントフォーク。
右)少しメッキを意識した塗装です。珍しい塗装ですね。

ここからは、いつもしている通常の組み立てに入ります。
リアフォークを仮付けしてサスペンションの動きを確認すると、ピボットスピンドルの動きがとても硬かったので、リーマーで調整しました。
次に、リアフォークがスムーズに動き、ガタが出にくくなるよう調整します。

ピボットブッシュ幅とスピンドル長は、きちんと調整しないと後々ガタが出てきて、リアサスペンションの動きがスムーズに動かなくなります。
スピンドル長に個体差はないのですが、フレームのブッシュ幅に個体差があるため、毎回スピンドル長で調整するのですが、その個体差(誤差)が塗膜や部材によるものなので0.1mmだったり0.5mmだったりと様々です。
通常、スピンドル長はフレームのブッシュ幅に対して長くないとスイングアーム(リアフォーク)が適正に動きません。
今回はブッシュ幅に対してスピンドル長を0.05mm長くしました。

ロウ付けしながらリアフォークの中心は出しているのですが、メインフレームに取り付けるとホイール中心寸法が変わる事があるので、もう一度点検しておきます。

ヘッドチューブやフォークコラムの下処理。

フロントフォークはアヘッドからスレッド仕様に変更するため、
フォークコラムの長さをお客さんの体格に合わせて切断し、ネジを切ります。

カスタマイズしたフレームが完成しました。

ここからコンポーネントを取り付けていきますが、少し細かな作業を。
フロントブレーキ取付ナットを純正の長さに合わせるとネジ山のかかりが浅く強度に少し不安があるので、長いナットをフレームに合わせて削り調整します。
削った面は外周面と内面のバリを取り、削った面は錆びにくいようにクリアー塗装を噴っておきます。
左)ブレーキナットを削る前、右)削って長さを調整した後。

左)フロントホイールを取り付けてクイックシャフトを締めると、ハブのダストカバーと調整ナットがサスペンションのボトムリンクに干渉していたため、ハブの回転が悪くなっていました。
右)干渉しているボトムリンクを削ることは出来ないので、ハブを一度分解して干渉部分のパーツを機能に問題の無い範囲で削ります。

反対側のダストカバーも削りました。

左右のダストカバーと調整ナットを削ったので、左右ともクイックシャフトを締めてもクリアランスが確保できて滑らかな回転になりました。

自転車という乗り物は、小さな小さな作業の積み重ねで、普通に組み立てたのとは別物になります。特にモールトンはそれが顕著に現れるかもしれませんね。
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